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お中元商戦だよ!ドクロちゃん!





★1★

 僕の名前は草壁桜、至って平凡な中学二年生です。いや、かつてそうだったと言うべきでしょうか。信じてほしいのですが、僕という人間はマイノリティ中のマイノリティ、往来を歩いていてテレビ局に取材されれば、変なウケをねらってOAをカットされるような素人さんなのです。
 ですがそんな一般ピーポーの僕にとって、永遠の伴侶と言うべき日常は、とある少女により奪われてしまいました。代わりに来たのは非日常という名の破戒録、無茶な難題をふっかけられる芸人さんのようなのです。あの番組、終わりましたが。
 その少女は身長135センチに81・52・78という豊満な数値をぎゅっと詰め込んだナイスボディ、それに付け加え、顔もとびきり可愛いのです。名はドクロちゃん、漢字に変換すれば地獄を思わせますが、ジャンル的に言えば天使らしいです。背中の羽根は出会いの時見せただけで、今はありませんが(あるのは昇り龍の刺青)、頭の上には天使のわっかがぷかり、あ!興味本位で触ってはいけませんッ!このわっかは日本刀の切れ味によりトマトはすっと、パンも鮮やかに、こんな事が出来ちゃうとかまぼこの板も無問題なのです。デモンストレーションなのでご家庭では真似しないでください。しかし彼女の危険要素はそれだけで無く、今、まさに、その脅威、
「いい加減降りてきてよ桜くんっ!」
「だ、だったらエスカリボルグしまってよッドクロちゃん!」
 その脅威の名は、棘付き鋼鉄バットエスカリボルグ、くわしい説明は字面で判断してもらうとして、当たり前の事だけ言わせてもらえば、殴られたら死にます。だから無論逃れている訳です。……部屋の角の上部に、蜘蛛男が如く張り付いて。
 上腕二頭筋や広背筋を駆使して、重力に逆らい続けなければいけません。さもなくば棘付き鋼鉄バットエスカリボルグの餌食です。くどいようですが、殴られたら死にます。
「降りやがれや桜くん!」どこで覚えたのか乱暴に言って棘付き鋼鉄バットエスカリボルグを、あ、そろそろしつこいですか、すいません。ともかくドクロちゃんはエスカリボルグを工事現場の誘導棒が如く扱いますが、選択はUターンですッ!さもなくば、僕の運命はハンバーグの材料、ベジタリアンでない僕は美味しくありませんッ!そしてこの部屋の角として第二の人生を歩もうと――理由は、自分、中二ですから―――決心したのですが、ドクロちゃんが突然背中を見せて手を後ろに組み、
「そこにおるか半蔵」
「はっ!ご用命はなごぶりゃべっ!」
 上様に呼ばれた忍者はすぐ参上つかまつる法則により思わず畳の上へ降り立った瞬間、光速で振り返ったドクロちゃんは、立てている僕の片膝を踏み台にして、その勢いもろともエスカリボルグを、ゴルフスウィングの要領で顔面にぶちかましました。渾身の力が込められてた事により、頚椎が爪楊枝のようにポッキリ折れ、僕の頭は足の要らない宇宙ロボが如くテイクオフ!窓ガラスを破り飛行していく僕の眼が映すのは、ズームアウトしていく、部屋と鮮血と首無し死体。そして景色に瞼の上から、黒く赤いカーテンがかけられた頃、「あ……さ、桜くんごめんッ!」やっと気付いたドクロちゃん、さっさとやるべき事をやってください、さもなくば、僕のドタマは東京湾の魚の餌です。
 ドクロちゃんは鼻の骨がひっついたエスカリボルグを、魔法少女よろしく振りまわし、そして口を開き、

 ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪

 くりくりの声にてそう唱えれば、高度3000にてラ○ュタの幻を見ていた僕の頭が、コントにて口に銜えさせたゴムのように戻っていきますっ!そしてあっという間に部屋に飛び込み、突っ立っている肉体と、物理的に可能なのかって思うくらい見事にドッキングしました。その勢いで前にこけました。右耳から片栗粉でとろみをつけた餡みたいなのを垂らしながら、うつぶせになっている僕にドクロちゃんは慌てて声をかけます。
「だ、大丈夫桜くんっ!?ボクが解るっ!?√2×√3はッ!?」
「意識を確認するのに難しい問題出さないでよッ!というか大丈夫じゃないって!なんだよあの全英オープン狙えるスィング!?しかも膝乗ってシャイ○ングウィザードとの複合かよっ!」
 立ち上がって猛然とつっこみ始める僕、そして決め台詞とばかりに「一体僕が何をした!?」と、それにドクロちゃんは答えます。
「だって桜くんがいじわる言うんだもんッ!ボクと一緒に出かけないってっ!」
「今日僕は友達と遊ぼうと思ってたのっ!約束はまだしてないけど」
「嘘だぁっ!桜くんの友達は愛と勇気だけだもんっ!」
「だから頭飛んだの僕!?いや滅茶苦茶いるよ!ミミズだって蛙だってアメンボだって!」
 人間いないじゃんと自分でつっこみます。うわ、さみぃっ!
「ともかく今日は一人で留守番してなさい、僕は静希ちゃんを探す旅に出るから」
「だったらボクが旅のお供になってあげるッ」
「戦士はいりません」