フォートナイト・フォー・ザ・パーティー
わたしの名前はミディ。
ミディール・アルフレア。
街道沿いの宿場町、チルコラントに暮らす、ごくごく普通の女の子。
この春からスクールの学年も七年生になる十三歳。
色の薄いブロンドの髪を無造作に結い上げて、わたしはポニーテールをなびかせる。
動きやすいオレンジ色のジャンパースカートにジーンズ生地のジャケットを着込んでは、ルーン文字の刻まれた杖を振るう。
そう、わたしの夢は《有名》な魔法使いになること。
魔法なんて、普通の人でもそこそこは使えるけど、やっぱり高度な術はね。しっかり鍛練した人じゃないとできないの。だから、魔法使い、っていう職業がちゃんとある。
それにね。新しい魔法の開発や、失われた魔法の再現なんかもしてみたい。
だって! もしそれができたら魔法史に、いいえ、王国の歴史にも名前が残る、すっごい事なんだから! もーう、かっこいいじゃない!
だから、わたしは魔法使いになりたいの!
――って、そうそう、それでね。
今回はそんなわたしが体験した不思議な不思議な、忘れられないとっても大事な十四日間について、お話ししたいと思うの。
わたしが、いままでで一番、魔法使いに近づいた十四日間。
冬の終り、スクールが春休みに入る、その日から始まったわ。
唐突に、パーティーまでの十四日間が――
一
退屈な終業式が終わってクラスへ戻れば、次には恐怖の通信簿が待っている。
隠れ巨乳のミシェル先生から手渡される瞬間は、いつだってわたしのまだ小さな胸はドキドキでいっぱいになるの。
窓際の自分の席に戻って、二つ折りの通信簿をおそるおそる端の方から開けていく。
国語・算数・理科・社会、体育・音楽・技術家庭。
十段階評価で五と六が並んでる。まぁ、ここらへんの成績はちゅうくらいで充分よ。
問題の科目は、《魔法》よ。
この成績が九以上なら、春から上級魔法のクラスに上がれる。
って――
「そんなぁ〜」
わたしは思わず声を上げた。
だって、聞いてよ!
七よ、七!
あれだけ頑張ったのに、十じゃない! 九でもない、八でもない!
七だなんて!
「どうしたの、ミディ?」
隣から親友のレッチェがのんびりとした口調で声をかけてくる。
「見てよ、レッチェ! 魔法の成績!」
レッチェはバンダナを三角巾のように頭にかぶる、そばかす顔の三つ編み赤毛の女の子。
服飾デザイナーを志望してて、いつも紙に絵を描いてるか、何かを縫うか、編んでいる。
そのデザインは、配色のバランスの絶妙さから芸術性が高い、って評価されているけど。つまりは普通に着るには派手すぎてアレだけど、飾っとくぶんには良いよね、っていうことらしい。わたしはけっこう、好きなんだけどね、あーいうデザイン。
でも、のんびりおっとりしたレッチェは街の評価を気にしない。そのマイペースさが可愛らしくて、また、わたしの尊敬するところ。
「それ、何かの間違いじゃない?」
無二の親友はそう言ってくれた。
「ミディじゃ十は取れないかもしれないけれど、九はあってもおかしくないのに」
「な、なによそれ」
十が取れないですって?
「だって、ミディったら毎回の授業で調子に乗って失敗のひとつやふたつ、欠かしたことないじゃない」
「う、」
たしかにそりゃ、ちょっとは教室を爆破させたり、みんなの頭にお花を咲かせたり、銀貨をプテラサウルスに変化させて一大事になったりもしたけれど、それでも七はひどすぎる!
わたしの普段の授業態度(調子に乗る前まで)や試験(実技・筆記)の成績なら、総合で七だなんてありえないはずなのよ。
「ちょっと、先生に問いただしてくるわ!」
席を立つや、教壇からミシェル先生に呼び止められた。
「ミディさん?」
「は、はい!」
急に声をかけられて、わたしはそのまま起立をしちゃう。
「ホームルームが終わったら、サミュエル師が研究室へ来るようにおっしゃってたわ」
茶髪のミシェル先生は、着やせした豊満な胸の下に腕を組みつつ、そう告げた。
魔法科のサミュエル師。
しわしわのヨボヨボの、ヒゲもじゃもじゃのサムお爺さん。魔法の授業の先生よ。
「レッチェ。わたし、行ってくるわ」
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