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SPC投稿小説
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ティーダ復活計画!




 そこは虹色と闇と、歌声に満ちた世界だった。
 揺らめく光と影の中を、何千何万という人々の“想い”が漂っている。ある者は生前の自分を思い出しながら。ある者は必死に愛しい人への祈りを込めて。いつか、生まれ変わるその時まで、彼らは切々と歌い続けている。
 ……ここは異界のさらに底の底。肉体を失った人々の「心」がたどり着く、最期の幻想の地。

 などとまあ、見た目だけはキレイだが。
 要するにここは、人間の魂のリサイクル工場の最終セクションみたいな場所である。未練のハキダメとも言える。
 そこに突然、ドヤドヤと実体を持った団体が押し入ってきた。馬だったりトンビの出来損ないみたいだったり、やたら露出度の高い色白美人だったりと、まるで統一性がない。
 その中の一人、浅黒い肌を持つ少年が、ひどく焦っている様子であたりをキョロキョロ見回した。
「まずい……もうなくなっているかも!」
 叫んで頭をかきむしり、少年はいきなり、近くを通りかかった魂っつうかヒトダマみたいな気味の悪い発光体のシッポを、むんずとひっ掴まえた。
「キミ、ティーダかい?」
 発光体はグネグネと暴れた。
『いててて! わいを28代オオアカ屋と知っての狼藉か! 放さんかいボケェ!』
 少年が探している「ティーダ」は標準語である。どっかの関西オヤジなどに用はない。
 少年は、突然そいつを足下に力任せにドガシャーン!と叩きつけて、粉々にしてしまった。オヤジの「いつか世界一の商人になりたい」というなかなか立派な“想いのかけら”は見るも無惨に破壊され、もはや自分がどこの誰かもわからなくなって、フヨフヨと漂っていってしまった。
 どうせ最終的には、どいつもこいつも今のようにバラバラになるのだ。また同じヒトダマを掴まえてしまうと面倒なので、違ったらブッ壊す方法は非常に合理的である。
「みんな……“ティーダの想いのかけら”を探すんだ! かかれぇ!」
 少年の号令で、怪しげな団体は手近なヒトダマにいっせいに襲いかかった。

 少年は、スピラでは「祈り子様」と呼ばれる存在だった。世紀の大英雄、召還士ユウナの望みを叶えるべく、ここに流れ着いているはずの「ティーダの想い」をかき集めて、彼を再生することになったのだ。
 まだ二十歳にもなっていない小娘が二度もスピラを救ってしまい、さすがに報酬のひとつも出さねばプレイヤーに文句をつけられるという状況である。富や名誉など具体的な報酬を要求された方が、神様扱いされている祈り子にとってはラクだったのだが……ユウナの願いはただひとつ、死んでしまったボーイフレンドの復活だけだった。
 ハッキリ言ってかなり面倒だ。だからこそ、アルティマニアでも読まなければ絶対にわからないような「復活の条件」を設定していたというのに、これが愛の力なのか、彼女は見事に条件を満たしてくれやがったのである。
「あそこで○ボタン連打するなんて、絶対にわからないと思ったんだがなぁ」
 シークレットエンディングに出演するティーダを、大急ぎで作成しなければならない。少年はイライラしてきた。すでに捜索から4時間近く経過していたが、いっこうにカケラひとつ見つからないありさまだ。
「キミはティーダかい?」
『ルールー、君をひとりにしてしまってすまない。ただ俺は、君と幸せに暮らせる世界を手に入れたくて……』
 ドガシャーン!
「キミはティーダだろ?」
『信じていたよ、さすが私の娘だ、ユウナ。私の長い旅も死も、きっとお前に何かを残せたと……』
 ドガシャーン!
「キミはティーダだよね、そうだろ!?」
『ホッホッホ、語ってもよいですかな?』
「いらん! ムカつく! オラお前食え!」
 いい加減ブチキレかけているのか、少年はそいつを、近くに来ていた電気馬に食わせてしまった。もはや生まれ変わることもできずに祈り子馬の養分となってしまったが、まあ深く考えない。
 死者への礼儀も何もあったもんではない。祈り子たちは手当たり次第に“想いのかけら”たちを掴まえては、破壊の限りをつくしていった。本当はもっと時間をかけてゆっくりと分解され、新しい命へと生まれ変わるハズなのだが……彼らの働きのせいで、通常の何倍ものスピードで処理されている。現実世界では、きっと歴史的なベビーラッシュになっているのではないだろうか。
 と、包帯だらけで両手に手錠がかけられている化け物じみた祈り子が、一匹のヒトダマを掴まえて高く振りかざした。
「見つけたのかい!?」
 少年が慌てて駆け寄ると、そいつはウネウネと妙な動きをみせつつ、
『ユウナたん……ハァハァ』
 とかワケのわからんことを呟いている。
「このユウナへの執着心……それっぽいね。よし、こいつはティーダの部品と認定しよう」