SP図書館

TOP

SPC投稿小説
Page:0001 
BACKPAGE NEXTPAGE


優しい幻



夢ならいい、と思った時があった。
良く分かんないうちにスピラに飛ばされて、リュックたちに助けられたときは。
もう一回シンに触れて、また夢みたいなのを見て、そして気が付いたらザナルカンドに戻ってる。
そんな都合のいい夢を見たいと思ってた。
でも、そんな現実逃避もすぐに終わって。

オレはガードとしてユウナ達と旅に出る。
親父と会って、スピラの死の螺旋を目前にして、愕然とした。

夢であって欲しいと思った。

もし夢だったらユウナ達に二度と会えないかもしれないけど。
「夢だった」って逃げられる。
「実際に起こった事じゃない。存在しないものなんだ」って。

その夢が、俺の方だったなんて、笑えない冗談みたいな事実。
バハムートの祈り子は、確かにそう言っていた。
否定はできなかった。
オレがくだらねえってわめき散らすよりも、あいつのほうがよっぽど説得力あった。
そうすれば、みんな筋が通った。
小さな頃からあいつを知っていた理由。
機械仕掛けのザナルカンドを俺が知っていた理由。
スピラの人間は死人にならないとザナルカンドに行けないのに、オレや親父はスピラに来れた理由も。

そりゃそうだよ。体のつくりが死人とオレらは一緒なんだ。
執着と信念が創る、偽りの生者を作り出す光の渦。
光り輝く、幻光虫の集合体。
唯一違うのは、異界送りじゃあ、オレの体は消えないって事くらい。
それでもいつかは、消えちゃうんだ。

たとえが気にくわないけど、シーモアみたいにさ。

でもそれはいつかじゃない。
すぐ近くまで来ている。自分自身で、それを早めている。
スピラの死の螺旋の中枢にいるエボン=ジュを倒す。
ザナルカンドを…俺を召喚している根元を絶つ。
それはスピラに永遠のナギ節を約束し、それと同時にザナルカンドごとオレを消滅させる。

…オレ、消えるんだ。
死ぬとかそんなんじゃなくって、消えるんだ。

ザナルカンドに帰れないとか、そんなことはとっくの昔にどうでもよくなっていた。

変えようのない現実に、ただ漠然と不安になった。

怖かったのかも知れない。

もし今、祈り子達が夢を見るのをやめたら。
その瞬間から、消えてしまう。
みんなに何も言えないままで。

みんなどう思うかな。
ルールーは怒りそう。ワッカは慌てそう。キマリは…ちょっと分かんないな。リュックは驚いてそうだな。
おっさんは「この時が来たか」って感じでしれっとしてそう。でも内心驚くんだぜ、きっと。
それから……

ユウナも、怒るだろうな。

自分が消えるのが怖いんじゃない。
みんなに何も残らないのが怖いんだ。

もしこれが消えないで死ぬ、だったらさ。
そりゃリアクションは消えるときと一緒かも知れない。
でも、思い出す時間がある。
オレの墓なら墓見ながらさ。
アイツはああだったこうだったって。そう言ってもらえる。

消えるときにはそれがないんだ。

いつ思い出すんだろう?オレ、消えた人っていないから分かんないけどさ。
みんな心の奥に閉まっちゃって、ずっと語れず終いじゃないのか?
それが、自分が消えることについて考えてて、一番怖かった。