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SPC投稿小説
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「何をしている」
そんなことを考えながら幻光河に浮かんでると、アーロンの声が岸から聞こえた。
「見て分かんないッスか」
「何を考えている」
アーロンのらしくない言葉に、思わず声が漏れた。
「心配してるッスか?」
「気味が悪いだけだ」
いい加減寒くなってきて、体を一旦水に沈めて、岸まで泳ぎ、ざばっと体を引き上げ、川辺に腰掛けた。
「自分が消えることについて」
オレがそう言うと、アーロンは目を見開かせた。勿論あのおっさんのことだから、すっごい微妙に、だけど。
「消えるのか」
マジな顔して訊いてくる。その表情の変わりようが実のところ面白かった。
それで、おどけて言ってみせた。「まさか」って。
「考えてみただけッスよ。死ぬのとは違う気がしてさ」
自分でも、妙に明るい口調なのには気付いていた。おまけに、アーロンの顔が見れなくって、河の方に目線を落としていた。
それでも、アーロンは騙されたみたいで。少し肩を落とした。
…騙されたふりだったかも知れないけど。
「消えるってことはさ、死体も何にも残んねえわけじゃん?そしたら、みんな何を見てそいつを思い出すのかなってさ」
珍しく、アーロンが黙る。
寡黙そうな見た目だけど、結構言いたいこと言うんだよね。この人。
まあ、究極召喚についてのことは例外だったけど。
「そう思うと、消えることって怖いなって。今までの自分が跡形無く消えるみたいでさ」
「少なくとも、お前は何があろうとも消えないだろうな」
その言葉で、初めてアーロンの顔を見た。
「だってさ、消えるんだろ?みんな」
「そうだな」
「何にも残らないんだろ?」
「名前は残るだろう」
「名前?」
予想もしてなかった言葉に、ポカンと口を開けてしまう。
「名前は、残るだろう。そいつを知っている人間のいなくなったスピラにさえも」
話の途中、アーロンが「分かるか?」的な目で俺を見る。
悪いけどオレ、そう言う話ダメなんだよね。
肩をすくめて「わかんねえ」って教えたら、ため息1つ付いて、話を続けた。
「例えお前の体が消えても、名前は消えない。お前の存在も消えない。永遠にな」
「そういうもんかな〜」
「そういうもんだ」
「意外とおっさん単純ッスね」
「単純でなければユウナレスカに正面から突っ込まんさ」
「それもそうッスね」
何日ぶりかに、声を出して笑った。そのつもりだったけど、どことなしか固い声だった。
「ティーダ」
久しぶりに名前で呼ばれて、引きつった笑い声が止まった。
「…俺の名前を、覚えておいてくれ」
その台詞に、固まった。さらっておっさん言ったけど、すごく重い台詞に聞こえた。
そんなオレを見てか、自分で言ってて照れたのか、アーロンはそう言うとマカラーニャの森に姿を消していった。
「アーロン、ありがとな!」
聞こえてるかどうか知らないけど、とりあえず森の茂みに向かって怒鳴った。
本音だった。話して何か解決した訳じゃないけど、気分が楽になった。
体が消えても、大丈夫だって。
…何が大丈夫か分かんないけどさ。
みんながオレを思い出すきっかけが残るって事が、嬉しかった。
一言アーロンに、言い忘れた。
ごめんって。
あんたの名前、忘れるはずがない。ずっとあんたはオレ達を見守ってくれたんだから。
親父とブラスカさんの約束もちゃんと守ったし。
でもオレ、覚えてられるかどうか、分からないや。
消えて自分の思いがどうなるか、分からないからさ。



「これからはお前達の時代だ」
還り際に、アーロンはそう叫んだ。
複雑な心境だった。その時代には、…エボン=ジュのいない時代に、オレはいることができないから。

アーロンを送ったあと、オレも行かなきゃって思った。
さっき一瞬だけど手が透けた。もうすぐ、消えるなって分かった。
だから、悲しい顔はできなかった。明るい顔して、別れようって思った。そう別れたかった。
少しでも、オレの思い出が、思い出しやすくなるようにって。