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SPC投稿小説
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 クラルデンの街外れの森の中にぽつんと佇む一軒の小屋。
 そこに飛び込んだ中年の男が目にしたのは、紅の姿。瞳と髪、そして身に着けた服まで燃え盛る炎のような色をした青年――つまりは俺の事だ。
 俺が最初にその中年男に抱いた印象は、一言で言えば、やせぎす。青びょうたんと言ってもいいだろう。
 身なりは良く、金のかかっていそうな品のいい服を身に着けているのだが、いかんせんそれが体にぴったりとした物であるばかりに彼の体格の悪さを強調している。
 髪の毛は体つきと同じに貧しく、色素も抜けて白くなっていた。こけた頬といい、これでボロでもまとえば物乞いにしか見えないだろう。
 そうやって俺が観察していると、男はおもむろに口を開いた。
「お前が、フォンとか言う魔術師か?」
 口を開く早々、男は傲慢にそう言ってよこした。服装と違って品の足りない男の口調に、俺は嫌悪を抱く。とてもじゃないが、好きになれそうな人物ではない。
「他人の素性を尋ねる時は、まず自分が何者か名乗るべきだと思うがな……まぁいいさ。俺はアンタが誰か知ってるからな」
 その言葉通り、この男の姿に俺は覚えがあった。と言っても、直接の面識があるわけではないが。
「ここレイべランツ領を治めるディシド候の息子ケイシブ。……弟に次期当主の座を奪われたろくでなし」
 俺がわざとそういう言い方をして嘲笑を浮かべてみせると、男は見る見るうちに顔を赤く染めて俺を怒鳴りつけた。
「貴様ッ、よくもこの私に向かってそんな口を……!」
 そう吐き捨てるが早いか、つかみかかってくるケイシブ。しかし俺はその細い両腕を軽くいなした。
 そして体を捌くと同時に足を出す。すると、ケイシブはつかみかかって来た勢いのままで前方へと投げ出された。
 かなり大きな音がして、ケイシブの体が床に伏す。――やれやれ、気位ばかり高くて能力のない貴族の見本みたいな男だ。俺は板張りの床が抜けなかったかどうか少し心配になったが、彼の起き上がったあとには特に壊れた様子はなかった。
 鼻を押さえてゆらりと立ち上がったケイシブはそれ以上挑みかかって来る事はなかったものの、未だ俺の方をじっと睨めつけていた。
 執念深さだけは人一倍だな、と半ば感心しながら、俺はさらに揶揄するように言う。
「仮にも侯爵家の人間が、そんな短気な事じゃまずいと思うがな」
 それに対してケイシブは、再び激昂するかと思いきや、静かな口調で自分の話を始める。もう俺の無礼さは無視する事に決めたようだ。
「今日はお前に頼みたい事があって来た」
 そう言って、懐から取り出した物を俺に差し出した。
「へぇ、さすがは侯爵家。写真とはまた、金に飽かせた代物だ」
 なおもからかい混じりに言いながら写真を受け取る。
 その時にちらりと彼の顔を覗き込んだが、そこに怒りはなく疲れたような表情のみ浮かんでいた。
 気に入らない相手はとことん馬鹿にしてかかるのが俺のやり方なのだが、反応がなくてはあまり面白味がない。仕方なく、手の中の写真に視線を落とした。
「へぇ」
 今度は嫌味でなく、本当に感嘆のため息を漏らす。
 写真に映っていたのは一人の少女だった。
 年の頃は十五、六。髪は赤味がかった栗色で、写真では隠れているが、背中か腰まではありそうだ。顔立ちはやや幼いが、蒼穹を映したような瞳にはどこか神秘的なものも垣間見える。そして肌は、太陽にさらされた事がないかのように白かった。
 美人と言うべきか可愛いと言うべきかは判断がつきかねたが、少なくとも造形的に優れているのは確かだ。
「私の娘が何者かに連れ去られた。出来るだけ早く見つけ出し、私の所へ連れ戻してほしい」
 淡々とした口調で要点だけ言うケイシブ。しかし俺はその依頼の内容に疑問を感じた。
「どうして俺なんだ?警察に頼むなり子飼いの連中を使うなりすればいいだろう」