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ソックスハンター −新たなる香靴下−




 始めに、ネタバレは前提としてあり。
 アニメ版では無く、ゲームとしてのGPMを元ネタにしています。アルファシステムHPの公式小説を読んでいると、更に楽しめるかもしれません。ていうか見てないとわからんネタが。それとシャレとして受け流してくれる方以外は絶対に見ちゃいけません。特に舞のファンの方ご注意、身の危険を感じますから。俺が。



【 第一回 選択 】

 狩人と呼ばれる者が居る。彼らは人でありながら人ではなく、しかして、神話や伝説にさえ現れない、闇にのみ生きる者達である。彼らに触れられるのは同じ黒の中、人類にとっての灯りを垣間見たもの。そしてもしその灯火を、業火として遠ざけず、希望という名をつける事が出来たのなら、彼らは、夢狩人と変わる。
 そして今灯火が、夜空のたった一つの星が見守る中で、ある男が目覚めようとしていた。この世界で最も悲しきピエロの衣装に、男は身を投じていた。
「―――気が遠くなるほどの快楽か」
 呟けば煌く、力強い星、男の右手にはその輝きにも負けない物が握られている。彼が一生追い続ける物、蜃気楼ではなく、走れば必ず手に入る、人類に運命が用意していた物。
 ソックス。
 ソックスハンター、中村。それが彼の全てである。ソックスがなくてはハンターはなく、ハンターなくして何がソックスか。まさに二つで一つの関係を、もう一度鼻に押し付ける。強烈な刺激が鼻腔を通り、そして脳を直撃する。眩暈にも似た快感に、中村はこのうえない笑みを浮かべた。
 倒錯の趣味とは人は呼ぶかもしれない。だが彼は既に目覚めていた。ソックスバトラー、靴下の為に戦う、悲喜劇の役者。滑稽に踊る様に誰かが笑うだろう、だが、いい、
「俺は好きでやってるたい」
 再びあのセリフ。とはいえ、人の目からは遠い物だ。けして表には出ない裏、少なくとも中村は、自らの影を引き連れて、ハンターとして生きて行くはずだった。
 だがここで奇跡が起こる。
 裏が表にあらわれる事。全ての価値が引っくり返されて、幕間のピエロが舞台にあがる時が来たのだ。そう、「さて」トランクに戦利品を詰めて、明日に備え家路に着こうとした、中村の前に、
 芝村舞が立っていた。
「のわあぁぁっ!?」
 心臓と一緒に飛び上がる中村、そのまま後ろへ跳ねて、壬生屋の席ごと彼は潰れた。見上げながら動悸治まらぬ胸を押さえる、「な、なんね?どぎゃんしたと?」
「それはこっちのセリフだ、このような時間までいて」
「………あ」
 その言葉を聞いて、中村は安心する。そうだ別に気付かれた訳じゃないんですよまさか一部始終見られていた訳じゃなくて、
「私の靴下を嗅ぎおって」
 顔の色が濁流のように引いて、真っ青になる中村。真夏でもないのに汗が出る。しかもそれに追い討ちをかけるように―――ギターソロが奏でられた。やばい、殺られる。
 猫の前の鼠、否、絢爛舞踏の前の唯の人。ハンターという裏の顔でなく、表の中村にとって、この場に立っているだけで取り殺されそうだった。「ちょ、ちょっと待つねっ!これには深い訳がッ!」
 聞く耳持たず、中村の行動に明らかに怒りをみせている舞、というか顔が赤い。忘れてた、芝村に逆らうは天に唾すると同じ。
「全く、芝村を嫌うそなたが我に近寄る時点で疑うべきだった、否、紅茶一つでそれを交換しようと提案した時にもだ」
 いやだって早くしないと貴方それ捨てちゃうし実際何人もの人がそれに泣いてるし、と言い訳も入れられない、まさに怒髪天を突く、乙女としての怒りが、変態に対する鉄拳が、
「人の趣味をとやかく言うつもりは、無いが、わ、私の、靴下を」
 この侭では、ま、まだだ、死ぬ訳には、まだ、
「我が民を殺しはせん、だがッ!」
 まだ俺は、
「整備員詰所で頭を冷やすが良いっ!」
 未来の靴下を見ていない!―――そう心で咆哮した時、そして、舞が新聞紙で顔を切り裂こうとした時、その二つの時が、重なった瞬間、
 裏が表に変わる、ハンターが、陽のあたる舞台に姿を表す―――
 中村は懐から本日もう一つの戦利品を、彼女の顔に突きつけた。
 まさに早業、瞬間の所業。彼女は地に伏すはずだ、空ろな目で頭をがくがく揺らして、………揺らして?
「まさかっ!」
 中村が叫んだと同時に、舞は目を張り詰めんばかりに開いた。そして再び手に持った新聞紙を、高速で振り下ろすッ!紙は刃と化し、中村の頬に傷を走らせた。