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SPC投稿小説
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私は続く。



何故か、口元に力が入っている。頬が、緩んでいるのだろうか。私は笑っているのだろうか。
気がつくと、私は夜の静寂の中にいた。
微弱な空気の流れさえも止まってしまったかのように、動くものは何も感じ取れない。
ただ、幽かだが月の光に照らされて周囲の輪郭が認識できるだけだった。
左手には手すりのようなものが6mくらい続いて行き止まっていて。その向こうにには、木々のようなものが見える。林、だろうか?
そして、右手は何か部屋のようになっている。
ここは・・・どこかテラスのような場所?
どこだろう、とよぎるはずの当然の思いは僅かだった。私に重要なのは、何故ここにいるのかということだけで、そして、それは多分分かっているのだから。
ふと、右足の下にあるブヨブヨとした感触に気づく。
同時に、さびた鉄のような臭いも鼻についた。
「・・・う。」
私は唇を強く噛みながら、それでもゆっくりと慎重に、そして丁重に足をその上からのけた。
見ることもなく私にはそれが分かっていた。
人だ。私の知らない男の人だ。
うつ伏せになっている男。
そして確信、私には一つの確信があった。
それは、この人はきっと私の知っている人に、どこかが似ているのだろうということ。
それは時に容姿だったり、雰囲気だったり、性格だったりする。
この男の人もそのどれかに当てはまるのだ。
両手を力の限り引き伸ばし突っ伏している彼の無念はどれほどのものだったのだろうか。
私は、そんな彼の脇腹に足を乗せていたのだ。
私は、そうして禍々しく笑んでいたのだ。
私は満足していたのだ。
「ごめんさい・・・。ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・」
右手に握られているものにも気づいた。冷たく硬く、そして人を一瞬のちに殺めてしまうことができる道具。
私は、どうしようもない自責の念に駆られた。やはり、いつものように。
気がつくと、私は謝罪の言葉を呟くように繰り返していた。
少しずつ強まっていく手足の震えと、力のこもっていく右手。
そして、心の中で膨れ上がっていく脱力感。
だが、それでも涙は出ない。
私はいったい、いつからこんな風になってしまったのだろうか。
と、分かっているはずの命題を敢えて自分自身に繰り返し問うことによって、自身を保とうとする。
やはり私は弱い。心の弱さは変わっていない。
弱さを再認識したあの時から。







ステンドグラスから虹色の光が差し込む。
綺麗な色だ。赤、黄色、緑、白。まさしく光の共演だった。
時折、留まっていられないように激しく揺らめく。
そんな静寂が漂う早朝の教会だった。
そこで、牧師が立つはずの祭壇の前で、彼は両手を合わせて一心に祈っている。
高く掲げられた褐色の十字架に向けて。
「動かないで。」
刺すようにつめたい空気の中へ染み渡るように感じた。
私の銃口は、背中越しから彼の心臓を確実に照準している。
心の中の震えは訓練の所為か、微かな腕の震えすら引き起こさない。
不安と、悲しみと、小さな希望でいっぱいだというのに。
そんな中、彼はまったく意に介していないように、ただ祈り続けている。
(どうしてそんなに冷静で、どうしてそんなに無防備なの。)
心の中でしか問えなかった、ずっと知りたいと願っていたこの疑問。
「こっちに戻って!・・・お願い。今ならまだ!。」
時間がない。
もうすぐ彼らがここへ来る。その時までに私が説得することができれば。
時間がない。
「ねぇ!聞いて。こっちへ戻って。お願い!」
彼はやはり何の反応も示さない。
ただ、粛々と祈りを捧げているのだ。
「ねぇ!こっちを向いて。こっちを向いて。でないと撃つよ!」
小さな講堂に何度も響くはずの大声は、まるででどこかへ吸い込まれてしまったように消えた。
「・・・お前になら撃たれても。」
代わりに返って来た言葉は静かな声だった。
「どうして!」
男は背を向けたまま言う。
「撃ってくれ。」
息が詰まった。自らの鼓動がはっきりと聞こえてくる。
「どうして!!!」